026 電車に乗りながらいろいろと考える



以前このブログに、電車通勤をしていると書きました。

今朝も電車に乗って学校に来ました。
しなの鉄道での通勤は、馴染むというところまではまだいきませんが、段々慣れてきた気がしています。

とは言え、教員になってから初めて電車を使っているわけではなく、都合3回、合計9年に及んだ県庁勤めは、そのすべてが単身赴任で、かつ電車通勤でした。

電車通勤というのは、自動車通勤に比べて時間に拘束される反面、本も読めますし、疲れていたら寝ていけますし、様々な出会いや人間ドラマもあって楽しいのです。

電車の中で学んだこともありました。

今回は手描きの絵を使ってその話をしましょう。

下の絵が電車のボックスシート(2人ずつ向き合って座る4人掛けの席)だとして、電車に乗ったらすでに1人Aの位置に座っていたとしましょう。



Aの位置ではなく、通路側に座る人がいないわけではありませんが、それは極めて稀なケースで、AかAの向いの席に座る人がほとんどだと思います。
Aの席に1人座っている場合、次の人は大抵Bの位置に座ります。



その際、多くの人が何も言わずに座りますが、それは決して気持ちのいいものではありません。
一言何か言えばいいのに、といつも思います。
ちなみに今朝私は、小諸駅でまさにBに座りましたが、「失礼しま〜す」と言ってから座りました。
すると、Aに座っていた男性は、読んでいた文庫本から顔を上げ、会釈をしてくれました。
コミュニケーションとはそういうものです。

さてこの、Aとその対角にBという構図も電車の中でよく見かけます。
この時、次の人が座るのは、まず間違いなくCです。
Cが空いているのにわざわざBの奥に入って行く人はあまりいません。
Cに座る人には「ここ空いてますか?」とかなんとか言ってから座ってほしいのですが、残念ながらそういうケースはむしろ少なく、今朝もそこに来た女性は無言でドンと座りました。



この3人掛けの構図も電車の中でよく見かけます。
このA→B→Cまでの流れは極めてオーソドックスで、日本を走る電車のボックスシートで起こり得る代表的なパターンだと言えると思います。

問題はこの次です。
この状態で3人が座席に座っている時、次に乗って来た人は、正確な割合は知る由もありませんが、一定の割合の人が座ることを諦め、残りの一定の割合の人がBとCの間を通ってDの位置に座ります。



さすがにこの時、黙ってグイグイ割って入る人はまずいません。
ほとんどの人が「すいません」とかなんとか言いながら通ろうとしますし、一方BやCの人は少し脚を引いて通りやすくすると思います。
これです、このやり取りです。
ここでできるのですから、同じことを前の場面にも拡げてほしいのです。
そのことによって世の中が少しだけ心地よいものになるはずです。

話を戻して、この3人の間を割って奥に入るシーンはよくあります。
よくありますが、あまりいいスタイルではないと感じていました。

ところがある時、Cに人が座った途端、Bの人が窓側に移動する場面に遭遇したのです。





普通のことと思うなかれ、少なくとも私はそんな場面を見た記憶はなく、大げさに言うと、「エッ、そんな手があるの?」というくらいのちょっとした衝撃を受けました。
しかもその男性はさりげなく、降りる時に出遅れることを承知の上で、当たり前のような顔をして移動したのです。

その行為は、「もしかしてだけど、Aの対角に座っていたのはAと膝が近づかないためで、Cに人が座りCと膝が近くになった以上、その関係はAに対するものであっても同じだから、それならもう一人気楽に座れるように窓側に移動しようと考えてのことなのではないか」と思わせるものでした。
その空席には、その男性のさりげない、やろうと思えば誰でもできる、それでいて極上の気遣いが隠されていたのです。

何年も経った今でもその男性の顔は覚えています。
それ以降、極たまにそういう行動をする人を見かけると、とても嬉しくなります。

Bの人が移動して空いた席には、何事もなかったように次の乗客が座ることでしょう。
それでいいのです。
自然な行動であって、感謝してもらうためのものではないのですから。
でも、「ここ、いいですか?」くらいの一言はほしいと思います。



その男性から大切なことを学んだ私は、それ以来、実践を心掛け、今朝もBの位置から窓際に移動しました。
すると、男性がやはり無言で私の横、Dの位置に座りました。

こうして私を乗せたしなの鉄道の電車は今日も定刻に上田駅に着き、私がほとんど最後にその車両を降りようとすると、今度は降り切らないうちに乗り込んでくる男性がいて、なんなんだこの人は⁉︎と思いましたが、そういう気持ちを駅にいる上田高校生や学校関係者に気付かれないように、何事もなかったかのような顔をして改札口へと続く階段に向かうのでした。


今日は他の競技より1週早く、硬式テニスの東信大会が開かれています。
吹奏楽団の幹部3年生が定期演奏会と保護者会の挨拶の依頼に来ました。
3年生が7月の松尾祭の企画の相談に来ました。
このようにして、3年生、4年生にとっては、一つ一つのイベントが「高校生活最後」になっていきます。





Posted by 上田高等学校長. at 2015年05月08日22:46