今朝、7時台の上田高校です。
冬が近づいて、影が長くなっています。
古城の門の桜の木のそれぞれの葉は色を変え、黄色くなった葉が散り始めています。
今日もいい天気になりましたが、秋らしい涼しい、というか寒いくらいの日になりました。
9月30日に行った、全・定の前期終業式・後期始業式の校長講話が上田高校公式ホームページにアップされました。
学校のホームページからもご覧いただけますが、今日は、少し長くなりますが、2つの講話をこのブログに掲載したいと思います。
平成27年度 上田高等学校 全日制 前期終業式・後期始業式 校長講話
平成27年(2015年)9月30日(水)
こんにちは。
長い前期が本日終了します。
振り返って、どうだったでしょうか。
今日は前期の終業式と後期の始業式を兼ねています。このタイミングで、4月以来、折に触れて君たちに話してきたことを含めて、今君たちに伝えたいことをまとめて話して、それを後期につなげてほしいと思いますので、今日はいつもよりちょっと長く話します。
前期を振り返ると、色々なことがありました。
生徒会最大行事の松尾祭がありました。文化祭と運動の部と。どちらも個々の生徒について言えば、もっと自分でできたのにと思っていたり、傍から見てもっとやれただろうという人もいたかもしれませんが、全体としては素晴らしかったと思います。文化祭の一般公開では、去年より1500人多い来客があったそうです。
5月には、地歴公民科の林先生が亡くなるという大きな出来事がありました。生徒のことを第一に考える優しい先生でした。この後、前期の締めくくりということで全員で黙とうを捧げたいと思います。
さて、学校のホームページにも書いてありますが、「学ぶ」ということの目的は2つあると思っています。
1つは自分自身が幸福になるため、あるいは豊かな生活を送るためです。
もう1つは、自分の幸福を追求していくと自分の幸福は自分だけでは成立しないことに気付き、次第に自分以外の周囲にも目が行くようになる、そういう意味では1つ目の自分の幸福とも関係していることですが、「自分以外の誰か」の役に立つため、あるいは、世の中を改革したり、よりよいものにしたりすることに貢献するためです。
では、その「学び」はどんなふうに行ったらいいのでしょうか。
明治から大正にかけて活躍した、私の大好きな文豪に夏目漱石という人がいます。『吾輩は猫である』とか『坊ちゃん』とか『こころ』とか有名で素晴らしい作品をいくつも残している人で、ここにいる人で知らない人はたぶんいないと思いますが、その漱石は、小説のみならず、講演の名手でもあって、その講演をまとめた『私の個人主義』という本が文庫本で出ています。その中で彼は、大体こんなようなことを言っています。
明治の時代、西洋に追い付け追い越せという中で、自分自身がどうすればいいのか、どう考えればいいのか、日本にいても答えが出なかった。ロンドンに留学してみたが、それでも、いくら本を読んでも一向に答えが見つからない。その時、これはもう自分で考えるより仕方ないと気付き、その想いを持って帰国した。西洋から入ってくる、例えば文学のようなもの、それを何でもかんでも有難がっている世間の風潮、それを、自分の酒を他人に飲んでもらって後からその品評を聴いて、そうだとしてしまういわゆる人真似だと言い、それを「他人本位」と称し、その対極にある「自分本位」という考えにたどり着き、ようやく心の平安を得た、と。
現代の社会でも大事なことは同じです。
君たちには、まず自分の頭で考えるということ、いろいろな情報や知識をもとに自分の頭で判断すること。「私はこう思う」という、その時点での自分の考えをしっかり持つこと。誰かに言われたからやるのでなく、その時の状況の中で、自分の意志で行動し、周囲の人と協働して事を成し遂げるということをしてほしいと言って来ました。また、高い志や強い想いを持って、それをカタチにしてほしいとも言って来ました。そのためには、様々なことをしっかり学んでほしいとも言って来ました。どうでしょうか。そういうことを意識し、次第にできるようになっているでしょうか。
そういう意味では、ネパールの地震に対する募金はよかった。先日、現地に君たちの募金が届き、地震で壊れた現地の小学校の修復に使われたという報告がありました。君たちの想いはカタチになったのです。
上田高校の伝統は「文武両道」と「自学自習」であり、そこに新たにスーパーグローバルハイスクールの指定が加わりました。文武両道や自学自習はなんとなく古臭く、SGHは新しいことのように感じるかもしれませんが、様々なことに意欲的に取り組む、様々な経験を積む、課題を自分で見つけてその解決策を自分で考える、そういう意味で、どちらも目指す方向は同じです。
今の3年生の全員、2年生の一部、来年度の6月19日以降の国政選挙から、その時点で18歳以上の人に選挙権が与えられ、1票を持つことになります。
今言った、自分の頭で考え、判断し、自分の考えを持ち、自分の意志で行動し、周囲と協働して事を成し遂げる、ということがますます大切になります。
もう一つ、違った角度から上田高校で学ぶことについて考えてみます。
「ふるさと」という歌があります。
「兎追いし かの山 小鮒釣りし かの川」で始まる日本人なら誰もが知っている歌ですが、作詞したのは高野辰之という、長野県の旧豊田村、今の中野市に生まれ、今の信州大学教育学部から今の東京大学に進み、今の東京芸大で教えた人です。1番の歌詞、冒頭の「兎追いし」を「兎が美味しい」だと思っている人も私の頃は結構たくさんいましたが、また実際に昔は兎を山で取ってその肉を普通に食べていましたので、そう考えるのも仕方ないかもしれませんが、これはもちろん「兎を追いかけた」ということで、そのように1番は、自然の中での子ども時代の思い出をうたい、2番は「いかにいます 父母 つつがなしや 友がき」と、人をうたい、3番は「志を果たして いつの日にか帰らん」と自分の意志、生き方をうたっていて、故郷の自然、小さいころの思い出、人、そして志と、まさに日本人の心の歌になっています。
上田高校はどうでしょう。
先程みんなで歌った上田高校の校歌、全ての同窓生がこの歌でつながっているわけですが、「関八州の精鋭を ここに挫きし英雄の」と、徳川の大軍勢を少ない人間で追い払った真田一族の心意気を受け継ぐことをうたい、「至高の望み」、すなわち高みを目指して日々精進することと、「至剛の誇り」、すなわち自分は精一杯高校生活をやり切ったという自信とプライド、それらを持って、「いざ百難に試みむ」という気概をうたっていて、それらこそが上田高校の目指す姿であり、受け継がれてきた精神だと言えます。
九州のある伝統校では、「高校を誇るな。高校が誇る人になれ」と言うそうです。
上田高校も自他ともに認める伝統校です。しかし、君たちが今享受している「伝統」や「社会的な評価」、学校における「自由」や「権利」は、君たちが作ったものではありません。君たちの先輩たちが築き上げ、努力によって脈々と受け継いできたものです。今、君たちは「権利」や「自由」を持っていますが、それを今度は君たちが守り、できればさらに高め、後輩たちに引き継いでいくという「義務」も同時に君たちにはあるということなのです。
さて、明日から後期です。
全ての人に平等に時間は与えられています。それをどう使うかでその人の人生が決まります。
以前、「1.01の法則、0.99の法則」という話をしました。昨日の自分を「1」として、今日からその100分の1、すなわち0.01ずつ付け加え、それを毎日1年間続けると、1.01の365乗は、約37.8になり、逆に毎日0.01ずつ失うと、0.99の365乗は、約0.03になってしまうというもので、継続や積み重ねの大切さを言っています。
人生とは日々の選択の積み重ね以外の何物でもなく、一瞬一瞬の今をどう生きるかの積み重ねです。それがSeize the day「今を生きろ」ということだと思います。
文武両道。
高校時代にいろんなことを一生懸命やってほしい。様々な活動を通じて、いろんな力を付けてほしいし、自分の適性も見極めてほしい。そのためには、一つのことが終わったらすぐに切り替え次のことに集中できないといけません。切り替えと集中を君たちに一層求めたいと思います。
自分の幸福を自分で築ける人になってほしいし、世の中を少しでもいい方向に導ける人であってほしい。そのための学びです。3年生、大学はもっと先の大きな夢を実現する通過点だと考えましょう。でも、とても大きな通過点です。苦しいときにどれだけ耐えられるか、成功するまで続けられるか。「至高の望み」「至剛の誇り」を胸に、百難に挑んでください。
人によって歩みのスピードは違っていていい。人に合わせる必要はない。自分のペースで成長すればいい。ただ、今言ったような気持ち、考え方を、全員が持って後期に望んでほしいと願っています。
終わります。
平成27年度 上田高等学校 定時制 前期終業式・後期始業式 校長講話
平成27年(2015年)9月30日(水)
おはようございます。
上田高校は2学期制を採っていますので、今日9月30日で前期が終わり、明日10月1日からは後期が始まります。
前期を振り返って、どうでしたか。
君たちそれぞれが、よくできたとか、もっとできたとか、いろいろな感想を持っていると思いますが、私から見て、君たちは、一言でいえば、本当によく頑張った前期ではなかったかと思います。
中学校までなかなか学校に来られなかったり、学校までは来られても教室に入れなかったりして悩んでいた生徒で、高校に入ってから学校に毎日来れるようになった人がたくさんいます。
それは、まずはその生徒本人が、「高校に入ったら、こうしたいんだ」という強い気持ちを持っていたということと、この学校や生徒の集団が、そういう気持ちを理解できる、とてもやわらかい雰囲気を持った集団だからだと思います。
授業中も多くの生徒が意欲的に勉強に取り組んでいると聞いています。後期には、授業を見て回りたいと思っています。
松尾祭では、一生懸命販売に参加しました。「校長先生、買って行ってください」と売り方がうまいので、ついつい色々と買ってしまいました。
一生懸命班活動に取り組んで、大会で成果を出している生徒もいます。壮行会もいい雰囲気で自主的に行われていました。
最近の生活体験発表会で、クラス代表になり、勇気を持って発表した生徒がいましたし、聴く側も、その思いを受け止めて、一生懸命訊き、一生懸命拍手をしていたと思います。
君たちは本当に頑張っていると思っています。
今、4年生と三修制の3年生は、いよいよ次の段階への進路を考え、実現する時期になりました。上の学校に進もうと考えている人、就職をしようと考えている人がいます。どうか自信を持ってください。君たちはこの上田高校で、本当によく頑張ってきました。
上田高校の校歌に、「われに至高の望みあり」とあります。今より高い自分を目指したいと考え、精一杯努力するということです。
「われに至剛の誇りあり」とあります。高校時代を精一杯過ごした。頑張った。力を付けた。その自信がある、ということです。
そして最後に「いざ百難に試みむ」とあります。より高いところを目指し、困難なことに自信を持って立ち向かっていってください。
君たちは、それができる生徒です。
さあ、明日から後期です。
これまで君たちに言ってきた、自分の頭で考えること、自分の頭で判断すること、自分の考えを持つこと、自分の意志で行動すること、周囲と協働して事を成し遂げること、こういったことを一層磨いてほしいと思っています。
歩みのスピードは一人一人違っていていい。他の人に合わせる必要はない。自分のペースで一歩ずつ前に進んでほしい。先程話した校歌の歌詞のように、「至高の望み」と「至剛の誇り」を持ち、「いざ百難に試みむ」の気概を持って、一緒に頑張りましょう。
期待しています。
終わります。