今日は桃の節句、雛祭りです。
昨日の卒業式から一日明け、全日制は55分×6時間の通常日課による春の特編授業(今日は7時間目にロングホームルームあり)が始まり、定時制は指定者対象の特別補充授業が行われています。
「ハレ」・「非日常」から再び「日常」に戻り、1年後の「ハレ」に向かう日々が始まりました。
2学年は「3年0学期」(受験に関して2年の正月明けをこう呼んでいます)から3年前期に向かうに当たって、ロングホームルームの時間に学年集会を開いていました。
さて、今日の正午で高校入学者後期選抜の志願変更を締め切りました。
今回、本校では志願変更期間中の動きはそれほど大きくはなく、最終的には、全日制が募集320に対して志願363、定時制が募集23に対して志願11となりました。
本校のホームページにも、県教委のホームページにも、今日現在の状況が掲載されています。
明日の新聞にも載ると思います。
学力検査は9日(水)、定時制は翌日に面接も行います。
さて、全日制生徒会誌『松籟』(しょうらい)が卒業式直前に発行されました。
年刊誌で号数が「63」とあります。
新制高校(上田松尾高校)になった年(昭和23年)からだと68でしょうし、上田高校に校名変更した年(昭和33年)からだと、松尾祭や私の年齢と同じ58のはずです。
なぜ63なのか?
こういう時に頼りになるのが『長野県上田高等学校史』です。
その「高校第一編」を見ると… ありました、「『松籟』の刊行」という項目が。
「昭和18年度の『報國團誌』を最後に、年ごとの学校の活動を記録する冊子の刊行が中断して久しかった。27年度に生徒会誌の第1号が『生徒会雑誌』という名称で誕生した。翌年名称を『松籟』と定め、以降毎年刊行される。『生徒会雑誌』は編集後記に「後日これに続く号が発行された時良い名称が与えられることを希望する」と自ら暫定的名称であると称しており、通常は『松籟』の「第1号」とされている…」
この後、発行に当たって、当時の生徒会長(矢島薫氏)の原稿をめぐる学校とのやり取りが書かれていて興味深いのですが、第1号の発行年とは直接関係がないので今回は省略します。
何れにしても、昭和27年度を第1号として、今年度で63号ということのようです。
今年は『松籟』の巻頭言を、ずっとそうだと聞いたので、「卒業生に贈る言葉」というタイトルで寄稿しましたが、前述の校史には「(第1号の)中沢校長の「巻頭の辞」に、編年体風の「1年の歩み」が続き…」とあって、第1号は、目次は現在と大きくは違わないものの、校長の言葉は「巻頭の辞」であったことが書かれていますし、遡って調べてみると、53号以前の巻頭言は「卒業生に贈る言葉」ではないことを発見しましたので、もちろん「卒業生に贈る言葉」でもいいのですが、来年は(その時まで覚えていたらですが)違うタイトルにしようと今から企んでいるところです。
今日は、この「卒業生に贈る言葉」を、少し長いですが、ブログに掲載したいと思います。
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「卒業生に贈る言葉」
校長 内堀 繁利
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。中学生の時に本校を志望し、一生
懸命勉強して入学し、本校で高校生活を送ってきた皆さんが、この日を迎えられたこ
とが何より嬉しく、一緒に喜びを分かち合いたいと思います。
さて、高校卒業というのは、人生の大きな節目・転換点の一つです。
中学生の進路選択は、一部の生徒が家を離れて高校の寮に入るとか、就職すること
はあるものの、大多数の生徒にとっては、通える範囲のどの高校に行くかというもの
であったと思います。高校生は、上級学校への進学一つとっても、四年制大学、短期
大学、専門学校、大学校などの校種があり、またその中に多くの専攻・専門があり、
場所も、家から通える所、県内、県外、あるいは海外と幅広くあり、さらには進学に
加えて、浪人、就職、何らかの目標実現のためのアルバイトといった路を選ぶ人もい
て、中学校卒業後わずか3年で比べ物にならないほど多種多様な選択肢が考えられま
す。たまたま本校全日制卒業生はその多くが国内の四年制大学へ進学するか翌年の進
学を目指して予備校に進むという実態はありますが、世の高校生全体を見れば、今言
ったような様々な選択肢の中から自分で選んだのが、実際の皆さんの進路先というこ
となのです。上級学校を卒業する時にはさらに多くの選択肢があると思いますが、こ
の「多様な選択肢から選べる」というのが成熟した現代の日本社会に生まれた皆さん
の特権なのです。「どうしよう。困った」と思うかもしれませんが、逆に、戦時中の
日本や現在貧困に苦しむ国の若者のように、選ぶ余地がなかったらどうだろうかと考
えてみてください。自分で選べるということがとても幸せなことだと思えるでしょう。
皆さんには、進学した後も、就職した後でさえ、これからの人生、常に自分の意志で
選べるという特権を持ち続けているということ(そしてその選択については最終的に
は他でもない自分が全責任を負っているということ)を覚えておいてほしいと思いま
す。
アメリカ、デューク大学のキャシー・デビッドソン氏は、2011年8月、ニュー
ヨークタイムズ紙のインタビューで、「2011年度にアメリカの小学校に入学した
子どもたちの65%は、大学卒業時には、今は存在していない職業に就くだろう」と
語っています。
2014年にオックスフォード大学のオズボーン准教授が発表した『雇用の未来―
コンピューター化によって仕事は失われるのか』という論文では、米国労働省が定め
た702の職業をいくつかの項目ごとに分析した結果、47 % が10~20年後に
は機械によって代わられると述べています。
日本に関しても、2015年12月に野村総合研究所が、オズボーン准教授らとの
共同研究で、あくまで技術的な代替可能性としながらも、10年から20年後に、今
ある職業601種類のうち49%が、機械や人工知能によって代替することが可能だ
と発表しました。
これらのデータを示して何が言いたいかというと、今ある職業がこれからもあると
は限らないし、入社後も自分の仕事が機械や人工知能に代わられる可能性があるのだ
から、これからの社会に生きる皆さんは、「〇〇は給料が高い」「○○は安定してい
る」(○○には職業や会社名が入る)といった「今」の状態だけを基準にして職業や
会社を選ぶ、という発想に立つのではなく、社会がどう変化しようが常に「〇〇がし
たい」「〇〇を究めたい」(○○には仕事の中身が入る)という自分の想いや志を大
切にして、仕事を選んだり、時には職業を創り出したりすることが重要なのではない
か、ということです。そして、その仕事は何のためにするのかと言えば、一つは自分
の幸福を追求したり自分の人生を豊かにしたりするためであり、もう一つは、そのこ
ととも関係しますが、自分以外の人の役に立つためだと思います。
「高校卒業は人生の大きな節目・転換点の一つ」と言いました。皆さんより少し
(たっぷり)長く生きている人間として言わせてもらえば、「人生の大きな節目・転
換点」はこれから何度もあります。そして、人生を真面目に一生懸命に生きていれば
いるほど、年齢が高くなるごとに、節目・転換点の持つ意味の重要性や難易度は確実
に上がっていきます。その時は目の前に立ちはだかる壁と格闘するのに精一杯で、こ
れ以上大きなことは人生で二度と起きないだろうくらいに思うものですが、後から振
り返ると、あの程度のことで何を悩んでいたのだろう、と思うものです。でも、安心
してください、その時々に「あの程度のこと」で目一杯悩み、もがくことで、節目・
転換点に対する対応力が確実に向上していますよ、なのだと思っています。
人は成功からも失敗からも学ぶことがありますが、失敗から学べることの方が大き
いのではないかと思います。ただ、それは「可能性」の問題で、失敗から学ぶ気がな
ければ何も学べません。また、人生は思い通りにならないことの方が多いと思います。
失敗した時や思い通りにならない時にどう考え、どう行動し、最後に自分の中にどう
落とし込み、前に進んで行くのか。悩みながら、自分なりの対処の仕方を考え、身に
付け、また考え、身に付け・・・とやって、気付いたら成長しているというのが人生
なのかもしれません。大リーガーのイチローが日米通算 4, 000 本の安打を打った時
に「 4, 000 の安打を打つには、 8, 000 回以上悔しい思いをしてきた。」(3打席
で1本しかヒットを打てなかったという意味)とコメントしたように、世の中で今大
成功を収めている人たちも、その何倍もの失敗や躓きがあって今日があるのです。逆
に言えば、失敗した時点で諦めていたら、彼らの今日はないのです。だから、失敗し
たり、思い通りにならなかったりしても、それが当たり前なのです。むしろ成長のチ
ャンスなのです。絶対にそこで絶望したり、諦めたり、投げ出したりしないでくださ
い。そして、頑張って頑張って、その結果行き詰ってしまったら、その時は一人で悩
んでいないで、友だちや家族に相談したり、恩師や母校を訪ねたりしてください。辛
いときは人に頼る、人が困ったら助ける、そうやってお互いに助け合い、支え合って
行けばいい。一人じゃない、共に生きる人がいるというのも人生の素晴らしさです。
人生楽な方がいい、という人がいます。でも、すぐに登れる低い山に登った時の充
実感や見える景色の美しさと、登るのが大変な高い山に登った時のそれらとが全く違
うように、人生に充実感や美しい景色を求める人は、敢えて少し苦労をした方がいい
かもしれません。必ず儲かる方法がないのと同じように、楽をしていい人生が送れる
ことは絶対にない、と肝に銘じておくのがいいと思います。皆さんの高校生活最後の
松尾祭のテーマは「 Seize the day(s) 」でした。これからも「今を生きる」ことに
全力を傾けてほしいと思います。
皆さんはこれからの新しい時代を創っていく人たちです。いろんな人がいていい、
と多様性を認め、受け入れた上で、自分もほかの人も大事にして、皆が気持ちよく毎
日を過ごし、幸福感を感じられるような社会を築き、皆さんの次の時代に引き継いで
いってください。
*
最後に、この1年、皆さんに話してきたことで、校長室前に掲示してあることを書
いておきます。心に響くこと、なるほどということが1つでもあったら、折に触れて
思い出してみてください。
皆さんのこれからの人生が幸多く、豊かで、希望と笑顔に満ちたものでありますよ
う、祈念しています。
*
○自分の頭で考え、判断し、自分の意志で行動せよ。
○高い志や強い想いを持て。
そしてそれをカタチにせよ。
○「常識」を疑え。いつも「本当にそうか」と考えろ。
○丸飲みするな、咀嚼せよ。
その方がより血となり肉となる。
○すべてを面白がれ。
○学べ。
○「1.01の法則」: 1.01 の 365 乗 =約 37.80
「0.99の法則」: 0.99 の 365 乗 =約 0.03
○1日24時間、1年365日。
すべての人に等しく与えられている時間を君はどう使いますか?
○君の選択を積み重ねたもの、それが君の人生だ。
さあ今君は何をする?
○"Live a life." ではなく"Live your life."
君の人生を生きよ。